歯科アマルガムの起源

アマルガムとは、水銀と他の金属との合金の総称です。
ギリシャ語で「やわらかいかたまり」を意味する malagma を語源としています。

歯科アマルガムは、歯科医院で使用される歯科治療のための材料です。
主に虫歯などの治療で歯を削った後、欠損部を埋めるための充填剤として使用されてきました。

アマルガムが歯科用修復材料として最初に使用されたのは1826年です。
フランスの歯科医師が、銀貨(銀:90%、銅:10%)をやすりで削った粉に水銀を混ぜて初めて使用しました。
初期のアマルガム合金は現在の規格品に比較して非常に性能の悪いものでした。

(吉田稔ら、歯科用アマルガムに使用される水銀のヒト及び環境への影響、聖マリアンナ医大雑誌Vol.30、2002)

1929年には、アメリカでアマルガム合金の規格が定められ、その後アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、日本の研究者によって急速に性能が進歩しました。

アマルガムは
・安価で加工がしやすく丈夫であること
・歯髄への刺激がないこと
・殺菌性に優れていること
・痛みを抑える作用があり二次カリエスになってしまった場合でも痛みが出にくいこと
など、歯科材料としての利点が多いことから1980年代頃までに世界中で広く利用されてきました。

健康被害の出現

アマルガムからの水銀放出量と体内にとりこまれる量

ところが、1990年代頃から、アマルガムに含有されている水銀によるとされる健康被害の報告が次々に上がってきました。
アマルガムは、口の中で簡単に気化、蒸発します。

通常、歯の治療で詰められたアマルガムからは、1日平均1-10μgの水銀が蒸散放出されています。
特に、アマルガムを詰めた初期、および、アマルガムを除去したときには、20-30μgの水銀が蒸散放出されるといわれています。

このようにして口腔内で生成された水銀蒸気は肺胞から約80%が吸収され、血液中に取り込まれます。
したがって、アマルガム修復による一日当たりの推定水銀摂取量は3~17㎍であり、食物から摂取するメチル水銀よりも多いとされています(WHO、1991)
(平成18年2月10日 医療環境問題検討臨時委員会 答申書)

現在はあまり使われなくなっています

このような発表が相次ぎ、アマルガムの使用は急激に減少しました。
1970年にはアマルガム合金が多用されましたが、現在、歯の詰め物にアマルガム合金が使われる割合はわずにとどまっています。
しかしながら、国(厚労省)や団体(米国歯科医師会)の見解と、患者や被害者団体、一部の研究者や歯科医師の見解が非常に食い違っており、混乱を招いているのも事実です。

このような状況ですが、日本歯科医師会は水銀に関する水俣条約の採択を踏まえ、2013年9月「歯科用アマルガムの廃絶に向けて取り組む」旨を表明しました。
歯科用アマルガムとしての水銀使用量は、金属パラジウム合金やセラミック、コンポジットレジン等の代替技術に伴い減少傾向です。

国内の年間水銀利用量は、1970年には約5,200kgでしたが、1999 年には約700kg、2006年には約100kg、2010年には約20kgまで大幅に削減されています。
水銀に関する国内外の状況等について 平成26年3月

諸外国ではアマルガムを使用禁止にしようとする動きが出てきており、実際にスウェーデン、イギリスでは使用禁止になりました。

いまだに禁止になっていない理由

未だにアマルガムが一部の国で使用されているのには理由があります。
一つは、アマルガムは歯科の治癒(修復治療: 歯の形や機能を回復する治療) に使用される材料として長い歴史をもち、耐久性、操作性に富み、もっとも信頼される材料の一つであることがあげられます。
したがって欧米の歯学教育では基本的な修復材料として採用されています。

また安価で比較的容易に使用できることから、発展途上国や国費による健康保険制度が充実していない国でも採用され続けています。
さらに発展途上国やこれらの国の僻地では近代的な歯科治療機器がなく、これらの機器が備わっていないような劣悪な環境下でもアマルガムは比較的容易に使用することができ、採用されているようです。
歯科アマルガムに関するQ&A集より

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