IAOMT推奨 安全なアマルガム除去

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世界中の「アマルガム反対派」の歯科医師たちは、アマルガムを除去する際に水銀に基準値を超えた暴露をする可能性があるということにいち早く気づいて、
その際に発生する患者・医療スタッフの両方の水銀への暴露を減少させるための数々の手法を考案してきた。




本記事で言及されている必要品については、IAOMTのオンラインストアで購入可能である。



世界中の歯科医師たちは、毎日のように何百万というアマルガムの詰め物の除去を行っているが、アマルガムを削りだす際に水銀に暴露する可能性があることについては殆ど意識していない。

そして殆どの場合、新しいアマルガムが"交換"として新たに利用される。

歯科医療における権威者たちは、アマルガムは安定した素材であり、水銀を放出することは全く無いか、あっても僅かであると言う。しかし同時に、水銀を用いないという歯科医を、アマルガムを削りだすときに「患者を不必要に水銀に暴露させている」として非難している。結局、どういうことなのだろうか。安全なのか、それとも水銀は放出されているのだろうか。

一切の疑いの余地なく、私たちはアマルガムが水銀を放出することを知っているし、関連記事によりそれは明らかであるとされている。
例:The Scientific Case Against Mercury Amalgam
Understanding Risk Assessment for Mercury From Dental Amalgamなど...

完成したアマルガムを37℃の作業台に乗せると、長期間に渡り、毎日表面積1平方cmごとに43.5μgの気体水銀を発生させる[1]。

一般的なブランドのアマルガムのサンプルを23℃の水で保存した所、毎日、4.5~21μgの水銀が、表面積1平方cmごとに発生した[2]。

バーを用いてアマルガムを切断すると、非常に小さな破片が表面積を増して発生し、その場に居る人間の水銀への暴露の可能性を著しく高める。

実際のところ、最近発表された研究において、アマルガムの詰め物をしていない協力者がアマルガムの破片の粉末のカプセルを飲み込んだところ、当然と言うべきか、その血中の水銀濃度が増加した[3]。


こうした研究発表の著者の結論としては、「アマルガムの破片による胃腸の水銀摂取は、量的重要性を持っている」とのことである。

モリンらは、翌日には水銀プラズマが3倍から4倍増加していること、アマルガム除去を10人の患者に行ったところ、1ヶ月の間、尿中の水銀濃度が50%増加していたこと、その後水銀濃度は減少したことを実証した[4]。

スナップらは、アマルガム除去施術中の水銀への暴露を少なくするための取り組みは、モリンの研究で引用されているよりも水銀摂取量を少なくできることを示した[5]。

水銀の気体状態ほどには、アマルガムの微粒子の問題については研究されていない。

高速のバー用いて詰め物を除去しようとすれば、多くの破片を生み出すこととなり、少なくともそのうちの65%が1ミクロンかそれ以下の大きさである。

こうしたものは呼吸で取り込まれる可能性が非常に高く、肺の奥まで到達し、ミクロの大きさの粒子がダメージを受け、水銀は数日で全身に吸収されてしまうこととなるのである。

こうした水銀への暴露は、気体による暴露のそれよりも数百倍影響力がある可能性がある[6,7]。

科学的な論拠があるわけではないが、アマルガムの除去を行った後、交換後の素材に関わらず病気になるなど、患者への悪影響に関する懸念は尽きない。

歯科医界における"水銀を用いない"歯科医たちは、こうした水銀の暴露に関する問題にいち早く気付き、様々な手法を以って、アマルガム除去施術中の患者・医療スタッフへの水銀の暴露を削減しようとしてきた。

本記事は、その物理的な手法、つまりバリアや換気に関する、どのような歯科医院でも実践可能な手法を紹介する。




本章における技術は、IAOMTのメンバーにより、Jerome mercury vapor detectorでテストされており、患者や医療スタッフが呼吸することになる空気中の水銀気体量が減少したことが確認されている。

実験的には未実証であり、ピア・レビューを含む専門誌への掲載もまだ行われていないが、実験の結果として、歯科医がアマルガム除去の感の水銀への暴露を可能な限り削減することで、その後の患者の体調不良のエピソードの報告は少なくなることが示唆されている。


しかし、ここで用いられている素材は、単なる一例に過ぎないということを気に留めておいて欲しい。

免許を持つ開業医として、我々は独自研究することを忘れてはならない。

塊の状態に切って冷やす

ここに挙げる事柄は単純で当たり前な、暴露を減らす上で常識的な手法である。古いアマルガムを除去する際、大きめの形に切り分ければ、ドリルなどで削りだすよりもエアロゾル化を防ぐことが出来る。

また、切除の際にウォータースプレーを当て続けるところで、温度を低温に保ち、水銀内の蒸気圧を下げることができる。




吸い込み


水銀の蒸気やアマルガムの微粒子を治療現場から排除するのに最適な道具は、高容量の吸い込み器(HVE)である。

除去を完了して完全に手順を終えるまで、HVEを患者の歯のすぐ近くで作動させておくことが推奨される。

但し、その吸い込まれたものが何処に排出されているかは事前に確認しておく必要がある。

もしもフタがされていない防臭弁に落としこんだり、単に地下に排出したりしているだけの場合、水銀の気体が吸引されてユーティリティルームや治療室に逆流する可能性がある[8]。

※下水に除去されたアマルガムや溶解した水銀が排出されないようにするために、吸い込みシステムのための水銀の分離器に関することについては、このウェブサイトのEnvironmental articlesも参照されたい


特に効果的なHVEのオプションとして、吸引チップである"Clean-Up"がある。これは端に囲いがあり、これで治療に当たる歯を囲むことができる。

これにより粒子の散らばりを劇的に軽減することができ、患者を吸引チューブの方へと向かせることも容易になる。

"Clean-Up"はIAOMTのオンライン、または(863) 420-6373で購入可能。
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ラバーダムの利用について


歯科医の中にはラバーダムを好まない者も居るが、一方で必ずといって良いほど用いる者も居る。

ラバーダムには多くのメリットがあるが、アマルガムの削り出しから生じる破片などのほとんどを蓄えることができる。

バーグランドとモリン[9]は、モリンの1990年の研究に対する追跡研究として、ラバーダムを用いた場合、アマルガムの除去施術の翌日の水銀プラズマの上昇がなく、10日後の尿中の水銀濃度の水銀プラズマの上昇も無かったことを示し、これをラバーダムの保護面からの有用性の証左であるとした。

当然ながら、ラバーダムを用いてアマルガム除去をしたグループも、用いなかったグループも、1年後には血中の水銀濃度が50~75%減少した。

IAOMTがスポンサーを務めた実験では、ラバーダムを利用することで患者を水銀の暴露から保護することができることを好意的に見ている。

臨床実験について、血中の水銀濃度の追跡調査による事例報告によれば、Clean-Upと合わせてラバーダムを用いれば、Clean-Upを単独で使うよりも効果が高くなり、Isolite®よりも効果が高いことが示された。

しかし、気体水銀はラバーダムを透過して拡散し、微粒子も完璧に捕らえられるわけではないことには注意しなければならない。


従って、次のことが言える。

・ラバーダムの下に唾液の吸出し機をあてがうことで、水銀を含む可能性のある空気を除去すること。ニトリル製のラバーダムは、ラテックス製のそれよりも気体水銀を防ぐ意味で有用である。

・終了時には、ラバーダムを、特に留め具の下をよく洗浄すること。これは、アマルガムの粒子がラバーダム上に残っていると、ごみ箱に捨てても水銀を放出するため。(鏡をガーゼや患者の胸当てで吹いた場合、その灰色の汚れも水銀を大量に放出するので注意のこと)

・アマルガムの除去が終わり次第、ラバーダムを取り外して、患者の口内を完全に洗浄してから新しい詰め物を用いること。気体水銀を完全に除去するには、最大で60秒ほどかかることもある。灰色の破片が無いか注意すること。舌の裏側に破片があった場合、患者を起こしてうがいをさせてそれを取り除くこと。

・除去後の洗浄により、患者の唾液から水銀を取り除くことも可能になる。この目的のために水に懸濁させることができる物質としては、活性炭、クロレラ、N-アスチルシステインがある。

ラバーダムを用いない場合、HVEについて充分に注意し、何度か作業を中断して、作業場を完全に洗浄しなければならない。
いずれにせよ、Clean-Up吸引器チップがあれば、作業場での粒子の拡散を防ぐことができる。




皮膚の覆い

何らかのバリアで患者の顔を覆うことで、アマルガムの破片が散らばって皮膚に付着したり目に入ったりすることを避けられる。これは濡らしたペーパータオル程度のものでも良いし、外科用のドレープを用いても良い。




予備呼気量

患者にはパイプで空気を供給し、アマルガムの除去中に口呼吸しなくて良いようにしなければならない。

陽圧で供給できる呼吸装置(亜鉛化窒素麻酔に用いる鼻用のフードや、似たような換気装置)を用いるのが、綺麗な空気を供給するのにおそらく最適である。
鼻カニューレは周囲空気を入れてしまうためここでは適さない。




歯科医師及びスタッフの保護


アマルガムを除去する際の術野で発生する水銀の微粒子量に関する調査と、近刊予定であるデータにより、推奨されてきた手順が現在では通用しないことが明らかになった。

治療中に発生する空気汚染の問題は、実際には以前の調査が示したよりも深刻である[10]。

加えて、汚染されたラバーダムやドレープ、グローブなどをどのように処理するのが適切なのかについては、まだほとんど解決されないままである。




ゴム手袋について

気体水銀は、ラテックスやビニールのラバーダムについてもそうであるように、ラテックスやビニールのグローブを透過して広がる。ニトリル素材は、これを防ぐ上でより効果が高く、ニトリル製のラバーダムが手に入らない場合でも、ニトリル製のゴム手袋があれば、歯科医の手を気体水銀から守る上で有用である。




制御空間および呼吸スペース

HVEの技術が如何に優れている場合であっても、いずれは術野周辺の空気は気体水銀やアマルガムによるエアロゾルで充満することとなる。

患者とスタッフの呼吸スペースを確保し、汚染された空気を避けて安全に呼吸できるようにするのが非常に重要である。




呼吸マスク

一般的に用いられている紙の衛生マスクは、アマルガムによる微粒子や蒸気水銀を吸い込まないようにする目的としては全く意味が無い。

歯科スタッフの保護のために産業衛生的観点から最適とされるのは、陽圧の呼吸装置を用いることだろう。

こうした類の装置は、安全装置に関するサプライヤーに問い合わせることで入手できる。

セットアップが簡単なのは、Bureau of Minesに認定されているハーフマスクタイプの呼吸装置に、水銀規格のフィルターカートリッジを備えたものと思われる。

IAOMTのオンラインストアでは、この目的に合わせて、MSA "Comfo-Classic" respiratorを購入できる。

スリーエムも似たようなハーフマスクタイプの水銀規格のカートリッジ(#6009)を備えた呼吸マスクを製造しており、これにはP-100プレフィルターが付属する。

このプレフィルターは、0.3ミクロンもの小ささの粒子を通さないように出来ていて、多くの工業資源から利用可能である。
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施術中の空気を清潔に保つ

気体水銀とアマルガムの微粒子がアマルガムの除去によって発生すると、施術している部屋の空気中に拡散し、やがてはその場に居る全員が暴露することとなる。窓を開ける他に、以下の様な手法で悪影響を軽減されたい。




フィルタリング
業者の中には、高機能な空気清浄機を扱っているところもある。

それがあれば、効果的に気体水銀や微粒子を除去することができるだろう。

限外ろ過に関する様々な手法を陰イオンの発生器と合わせて用いる他、基本的な真空力で術野から空気を除去することができる。

Dent-Air Vac、E. L. Foust、Smart-Air Solutions、Tact-Airが利用可能で、それぞれの商品はIAOMTのスポンサーページで比較されている。




補足的な排気

単に空気を術野から排除するだけでも、水銀への暴露を抑える上では有効である。
また、オフィスの中には、非常に良くデザインされたメカニズムを導入しているところもある。

IAOMTのメンバーのうちの1人は、オフィス内の中心にある吸引器の排気を建物の外へと行っていた。

彼がアマルガムの除去を行っている間、患者は吸引ホースを顎の下に当てるが、これにより部屋の中での気体水銀の検知量はゼロとなった。
画像の説明

参考文献:
1 Chew, CL; Soh, G; Lee, AS; Yeoh, TS. Long-term dissolution of mercury from a non-mercury-releasing amalgam. Clin Prev Dent. 13(3): 5-7. (1991)

2 Haley, BE, IAOMT website article

3 Geijersstam, E; Sandborgh-Englund, G;Jonsson, F; Ekstrand, J. Mercury uptake and kinetics after ingestion of dental amalgam. J Dent Res. 80: 1793-1796 (2001)

4 Molin, M; Bergman, B; Marklund, SL; Schutz, A; Skervfing, S. Mercury, selenium, and glutathione peroxidease before and after amalgam removal in man. Acta Odontol Scand 48(3): 189-202 (1990)

5 Snapp, KR; et al. The Contribution of Dental Amalgam to Mercury in Blood. J Dent Res, 68(5):780-5, 1989.

6 Richardson, GM; Inhalation of mercury-contaminated particulate matter by dentists: an overlooked occupational risk. Hum Ecol Risk Assess 9:1519-1531 (2003)

7 An extensive discussion of this issue is presented in Richardson’s lecture to the IAOMT in October, 2004. A DVD copy of the lecture can be obtained through the Online Store.

8 Stonehouse, CA; Newman, AP. Mercury vapour release from a dental aspirator. Brit Dental J. 190:558-560 (2001)

9 Berglund, A; Molin, M. Mercury levels in plasma and urine after removal of all amalgam restorations: the effect of using rubber dams. Dent Mater 13:297-304 (1997)

10 Nimmo A, Werley MS, Martin JS, Tansy MF. Particulate inhalation during the removal of amalgam restorations. J Prosthet Dent. 63(2):228-33 (1990)





英語サイト
Safe Removal of Amalgam Fillings